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担当医師紹介

​牧野郁子  Makino Ikuko

府中市民病院 婦人科医師の牧野です。

「女性医学予防チームとは」

府中市民病院は、「女性予防医学チーム」を立ち上げました。
 

 なぜ“女性”なのか?

 なぜ“予防”なのか?

広島で仕事を始めてから、とても気になることがありました。
車いすや杖で受診される高齢女性が多いことです。
早速、調べてみると、
広島県女性の平均寿命は87.33歳ですが、健康寿命は73.62歳、
つまり長生きしていても不健康でいる期間が13.71年です。
残念ながら、広島県は全国でワースト1位であることを知り、
私の“気になること”の謎が残念なかたちで解明されました。

高齢になってから、男性に比べて女性は骨折が多いと報告されています。
65歳以上の女性で介護が必要となった原因として
“骨折・転倒”が3位となっており
(1位:高齢による衰弱 2位:認知症 3位:骨折・転倒)
特に女性は骨を大切にしなければ、老後を元気に過ごせないことがわかります。


つまり骨折予防が大切となります。

 なぜ女性に骨折が多いの?

女性に骨折の多い大きな理由のひとつとして、
女性ホルモン(エストロゲン)の変化と骨密度の関連があげられます。
エストロゲンと骨量は図のように同じカーブを描きます。
閉経周辺になるとエストロゲンが急激に減少し、同時に骨密度も減少します。
しかも、症状なく静かに急激です。
エストロゲンは閉経周辺まで、骨密度をキープしてくれていたのです。

閉経期が、“産婦人科医が“骨活”のお話できる最後の機会ではありますが、
更年期をトラブルなく過ごされたかたは、お会いできませんので、
このようなお話ができるチャンスはありません。
高齢期にはいって骨折してしまい、整形外科受診になってしまうのです。

そこで、“骨粗鬆症と予防と治療のガイドライン”の診断基準で「異常なし」
だとしでも、高齢期を元気に活躍できるように、
確実に減少する骨密度に目をむけようと思い始めました。
減少に備えて何をすればいいか?
骨粗鬆症の危険因子のあるかたや骨量減少傾向のかたへの道筋について
アドバイスできればと考えています。

産婦人科医の介入ですが、だいたい20歳で骨密度はピークになりますので、

思春期からの月経不順・無月経(3ヵ月間月経がない)の管理を考えています。
骨検診や、食事や運動については院内の専門家を紹介します。
危険因子や骨量低下のある女性へ対して、予防的または、治療として
活性型ビタミンD剤、ホルモン補充療法、選択的エストロゲン受容体モジュレーター
(SERM(selective estrogen receptor modulater))(★ページ最下部にて説明)を提案していきます。

 公益財団法人骨粗鬆症財団パンフレット“骨粗鬆症の予防は成長期から”より引用

 なぜ多職種チームをつくったか?

産婦人科医としては、婦人科疾患や女性ホルモンについては得意な専門分野です。
何を食べたらよいか? どんな運動をしたらよいか?については素人です。
栄養学や運動学、薬や放射線検査などは、専門家に聞くのが一番です。
他職種チームを結成すれば、みなさんに、エビデンスがある情報を
発信することができるだろうと考えました。
呼びかけでプロ意識の高い楽しいメンバーが集まりました。
“予防としての骨活”作戦を他職種チームでお伝えする病院はあまりないと思います。
医師、看護師、管理栄養士、理学療法士、薬剤師、診療放射線技師、
そして府中市からも栄養士さん、保健師さんなど・・仲間も増えています。
それぞれのメンバーの専門性や得意分野をいかした情報発信を行う予定です。
楽しみにしていてください。

今後は院内での勉強会やイベント、年代別ドックを考えています。
時節柄、まずはホームページから充実させていきたいと考えます。

 「骨活」はいつからはじめたらいい?

胎児からです。胎児から骨はつくられます。
よって妊婦さんの体型や食事は大切になってきます。
胎児のため、自分のために食事を気にしていただきたい時期です。
そして、思春期。
骨密度の最大ピークは20歳前後です。
今後の減少に備えて“骨をたくわえる”のに重要な時期です。
食生活や運動がとても大切であることを知っていただきたいのです。
無月経や月経不順などのエストロゲンの変化も気をつけるべきです。
産後の授乳(無月経)による骨密度減少は回復が難しいと報告があります4)。
特にやせの褥婦さんは要注意です。
産後に骨検査を受けていただきたいものです。
そして、最後の啓蒙のチャンスは閉経前後になります。
もっとも骨密度が低下する時期です。
閉経以降は定期的な骨検診を勧めます。
骨粗鬆症と診断すれば整形外科をご紹介します。

 では“骨活”はどうしたらいい?

骨を守る3つの基本について、
太田博明先生は①骨検査 ②栄養 ③運動とお話されています5)。
それぞれの方法の詳細は、今後HPでお知らせします。

 最後に

思春期のみなさん、妊婦さん(胎児)、褥婦さん、40歳からのゆらぎ世代、
閉経周辺期、それからの高齢期・・・
それぞれの世代にあった、さらに、そのひとに適する“骨活”方法を
提案させていただく予定です。
自分にあうような食事スタイルや運動法、予防薬についてプランを立ててみませんか?
すべての年齢の女性のみなさんが健康で笑顔で過ごせるように。
そして年を重ねたときにこそ、元気に活躍出来ますように。
女性が元気であれば、家庭も職場も市町村も明るくなります。
備後地区の女性が笑顔でお元気であるようお手伝い出来れば幸いです。

【参考文献】
1)    厚生労働省;平成27年都道府県別生命表の概要・第11回健康日本21推進専門医委員会
2)    Orimo H et.al. Osteoporosis Int. 2016
3)    内閣府HP
4)    Kurabayashi T et.al J Bone Miner Metab.2009
5)    太田博明 骨は若返る! さくら舎

★【SERM(selective estrogen receptor modulater):サーム
 選択的エストロゲン受容体モジュレーター】とは

 骨粗鬆症の予防に有効なくすりです。
骨だけに女性ホルモンと同様のはたらきで作用する薬剤で、子宮内膜や乳線には
悪影響のない薬です。
骨への作用だけでなく、乳がんの発症をおさえる側面ももっています。
長期間内服での効果と安全性がある薬です。
副作用として頻度はきわめて低いですが静脈血栓のリスクがあります。
(4ヵ月までがピーク:0.2%)
ビタミンDが不足していると、この薬だけでは足りないことがあるため
活性型ビタミンD3薬を併用することがあります。

府中市民病院

726-0851

​広島県府中市鵜飼町555番地3

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